あなたはどんな家庭で育ちましたか?仲のいい家庭、悪い家庭、関係が希薄な家庭、いろいろな家庭があります。誰もが良い家庭で育ったというわけではなく、中には家庭環境が悪く家族としての機能を果たしていない家庭も存在します。そのような家庭で育った人はアダルトチルドレンという状態になってしまったり、ほかにも様々な精神的問題を抱えることがあります。
今回の記事ではそんな、「機能不全家族」について深堀します。この記事を読むことで、かつて自分が機能不全家族で育ったかもしれないと思っている方、現在機能不全家族に陥っていると感じる方の克服のヒントになることでしょう。ぜひ最後まで読んでいただき、心を少しでも軽くしてくださいね。
機能不全の家族とは?
機能不全家族の定義とは
機能不全家族とは、家族が本来果たすべき役割を果たせず、家族が心理的に満たされない状態のことを指します。たとえば家族の中が極端に悪かったり、親がギャンブルや酒に依存していたり。その実態は様々ありますが、その最たる被害者は家庭内で弱い立場にある子供や高齢者になりがちです。
機能不全家族の種類
機能不全家族には様々なパターンがありますが、代表的なものをいくつか挙げます。
①アルコール依存症の家庭
…親がアルコールに依存し、家族がその影響を受けている場合。
②虐待のある家庭
…身体的虐待、性的虐待、心理的な虐待などが行われている場合。
③ネグレクトの家庭
…子供の世話が怠られ、基本的な生活が保障されていない場合。
④過保護な家庭
…子供を過度に保護し、自立を妨げている場合。
⑤冷淡な家庭
…家族間で感情的な交流が少なく、お互いを尊重し合えていない場合。
機能不全家族が子どもに与える影響
機能不全家族で育った子どもは、様々な影響を受けます。
・自己肯定感の低下
…自分のことを認めることができず、常に自分を責めてしまう傾向があります。
・人との距離感がつかめない
…親との関係性が不安定だったため、人との距離感が分からず、人間関係で苦労します。
・感情のコントロールが難しい
…感情を素直に表現できず、抑圧したり爆発させたりしがちです。
・依存心が強い
…誰かに頼らないと生きていけないと感じ、依存的な関係を築きやすいです。
・トラウマ
…過去の辛い経験を引きずり、現在の人生に影響を与えていることがあります。
このように機能不全家族は子供の成長に悪影響を及ぼし、将来的に「アダルトチルドレン」という状態にしてしまう可能性を持っています。アダルトチルドレンとは、家庭環境の影響で人とのコミュニケーションや生活に様々な苦労を抱えた大人のことです。
機能不全の家族の特徴
コミュニケーションの障害
例えば親が高圧的で異様に厳しく、子供のちょっとした発言で怒鳴るような家庭だった場合、子供は委縮してしまい、どんどん何も言えなくなっていきます。逆に親に話しかけてもあまりに冷淡な反応が返ってくる家庭の場合も問題です。学校であったことやできるようになったことを報告しても「ああ、そう」。このような反応しか返ってこないとなるとどう思うでしょうか。親は自分に興味関心がなく、大切に思われていないのだな、と感じてしまい、どんどん自己肯定感が下がっていきます。
怒鳴ったり無反応だったりだけでなく、なんでも否定されてしまうというパターンもあります。例えば部活を始めたいといっても、「勉強にだけ集中しなさい」、進路の希望を伝えても「お前にできるはずがない」など。これも段々と話すのが億劫になってしまったり、逆に反発心が強くなって問題行動を起こすようになる可能性があります。前の2例よりこうした家庭だったという方が多いかもしれません。
心理的な虐待
心理的な虐待は、言葉や態度、無視などを通じて子どもの心を傷つけ、精神的な発達を阻害する行為です。身体的な虐待と異なり、外見に傷が残らないため、見過ごされがちですが、子どもに与えるダメージは非常に大きく、長期的な影響を及ぼす可能性があります。
主に以下のようなものがあります。
・暴言
・無視
・脅迫
・比較(兄妹や同級生での比較など)
・過度な期待
・拒絶
このような虐待を受け続けることで子供に様々な悪影響があります。自己肯定感の低下、抑うつ症状、対人関係が苦手になる、攻撃的になるなど、こうした影響が子供時代だけでなく大人になってからも尾を引くことがよくあります。
家族の役割の混乱
機能不全家族の中でも、家族それぞれの役割が破綻し混乱してしまっている家庭があります。例えば親が家事をせず子供が家事全般をになっており、お手伝いの領域をはるかに逸脱している場合、学習や遊びの時間を十分に確保できず、望んだ進路に勧めなくなったり同年代とのコミュニケーションのとり方がわからなくなったりしがちです。
家庭の事情は様々あれど、やはり子供はよく学びよく遊ぶことが大変重要です。しかしもし近所でそういった家庭があっても、他人の家庭に口を出すというのはハードルが高く、なかなか救いの手が差し伸べられにくいという面もあります。明確な虐待が見えない場合は、児童相談所などが動いてくれる可能性も低いといえるでしょう。
機能不全の家族の中で育ってきた人の特徴
機能不全家族で育った人には共通した特徴があります。
①自己肯定感が低い
…自分の価値を認めることができず、常に自分を責めてしまう傾向があります。
②人との距離感がつかめない
…親との関係性が不安定だったため、人との距離感が分からず、人間関係で苦労します。
③感情のコントロールが難しい
…感情を素直に表現できず、抑圧したり爆発させたりしがちです。
④依存心が強い
…誰かに頼らないと生きていけないと感じ、依存的な関係を築きやすいです。
⑤完璧主義
…何事にも完璧を求め、少しでもミスをすると自己嫌悪に陥ります。
⑥責任感が強い
…周りの人のことを優先し、自分のことは後回しにする傾向があります。
⑦人に気を使いすぎる
…相手の顔色を伺い、自分の意見を言えないことがあります。
⑧孤独感
…いつもどこかで孤独を感じています。
⑨過去を引きずる
…子供の頃の辛い経験を引きずり、現在の人生に影響を与えていることがあります。
家庭環境の影響でこうした特徴を持つ人は、先に少しふれましたが「アダルトチルドレン」と呼ばれます。
もしも、子育て中の方で、アダルトチルドレンについてお悩みでしたら、下記の記事もおすすめです。
機能不全の家族を克服するために大切な3つのこと
自己理解を深める
機能不全家族で育った人はアダルトチルドレンの状態に陥りやすく、日常生活に様々な支障をきたす場合が多くあります。そのことで心を病んでしまったり、負のループに巻き込まれてしまわないように、まずは自己理解から始めましょう。
生活やコミュニケーションがうまくいかない原因は何なのか、それを解消するには何をしたらいいのか、解消した先にいる自分はどんなふうになっているか。一つ一つ具体的に考えてみることが重要です。一つ例を示してみます。
悩み:職場のひととうまく話せない
原因:卑屈になりすぎてしまうために、へりくだり過ぎて相手に不快感を与えてしまう
解決策:信頼できる人にフィードバックをもらい少しずつ改善する、得意なことを見つけ自信をつける
解決した先の自分の姿:自信を持って話すことができ、誰とでも打ち解けられる
このような形で、自分なりに解決ストーリーを考えてみましょう。
専門家のサポートを受ける
自分の力で解決するのが難しいと感じた時は、迷わず専門家を頼りましょう。現代は、資格を持った専門家やメンタル系の病院など、頼れる先はたくさんあります。
・臨床心理士
…心理学の専門知識をもとに、心の問題全般に対応してくれます。
・精神科医
…精神的な問題を抱えている場合、薬物療法を含めた治療を受けることができます。
・カウンセラー
…臨床心理士と同様に、心の問題に寄り添い、話を聞いてくれる専門家です。
・精神保健福祉士
…精神疾患を持つ人やその家族に対する相談や支援を行っています。
・ソーシャルワーカー
…児童相談所や福祉事務所などに配置されており、生活全般に関する相談に乗ってもらえます。
健全な人間関係を築く
機能不全家族で育った人はアダルトチルドレンになりやすいということは先にも述べましたが、アダルトチルドレンの特徴として人間関係が不健全になりやすいというものがあります。自己肯定感の低さから依存的な関係になってしまったり、人との距離感がわからないために友人や同僚とうまく付き合えないことも。
これを解消するには、以下のような方法があります。
①コミュニケーションスキルを磨く
…関連書籍を読んだり、信頼できる人にロールプレイで練習させてもらうのも効果的です。
②自他の境界線をしっかり意識する
…自分は自分、他人は他人。考え方も感じ方も全く違う人間であることを再確認しましょう。
③自己肯定感を高める
…必要以上に卑屈にならないよう、自分のいい所や自信の持てるポイントを探しましょう。
一度に全部!となると大変ですので、まずは小さな一歩を意識して始めてみることをおすすめします。
機能不全の家族の傷を癒して自分らしく生きよう
機能不全家族で育った経験は、とてもつらいものです。その時つらいだけでなく、大人になってもある種のトラウマのように心に絡まったまま離れないことも多くあります。その絡まりを少しでもほどくためには、自分を理解し、適切なサポートを受け、人間関係を健全化していくことが重要です。
いきなり何もかも実行するのは大変なので、まずはこういった記事で少しずつ情報を集めながら、できることから一歩ずつ始めていきましょう。そうすることで、あなたの心が少しでも安らぐことを祈っています。
あなたはとても大変な思いをして、我慢して我慢して子供時代を過ごしてきたと思います。子供のころは自分のことを自分でする力がありませんから、どうしても環境から抜け出すのは難しかったですよね。
でも、あなたは大人になりました。一生懸命つらい環境を乗り越えてくれました。もう、過去のつらい経験から解放されていいんです。どうか勇気をもって、一歩踏み出してみませんか。この記事でそのお手伝いができれば幸いです。